「好きなアニメソング10選」とでもしようか。
しかしそれでは本当に、なんのひねりもない。
アニメに興味はあれど実際にしっかりと見た作品はとても少ない。
両の手で数えられるほどではないだろうか。
ただでさえ薄い感想文ブログが、「アニメソング」について書くのにアニメを知らないのでは……なんだか問題アリな気がする。
そういうわけで、私なりに少しひねりを加えて出したのが次のテーマだ。
「別れの歌」
……ひねってあるのだろうか。
選出に際し、
"死"をうたったもの
というルールを勝手に設定した。
さまざまある別れのなかでも、”死”によって離れ離れになってしまったことが歌われた曲たちを選び出す。
順位付けの意図はない。
まずは10曲挙げてみよう。
- 足音
- 桜の雨、いつか
- ポルツ
- 落花枝に帰らず破鏡再び照らさず
- TINY DROPS
- JOURNEY
- メロディー
- いぬ331
- VANITAS
- 花の匂い
20曲くらい挙がった中から10曲に絞るのは悩んだが、以上の10作品としよう。
検索すればもっとたくさんの曲が出てくるのだろうがそうはせず、所持しているCDから選び出してみた。
それでは、各楽曲について解説・感想を述べて紹介といきますか。
01_足音
収録作品は1997年11月27日発売、槇原敬之のアルバム『Such a Lovely Place』。
自分の鼓動が聞こえるほど静かなところで、ずっと待っていた「君」の足音が聞こえる。もう、一人だけの旅はおしまいにできる。
……これは一部だけの解釈だが、ところどころに、今生きている現実の世界ではなく、魂とかの世界を歌っているように思える表現がある。
表現力ないことが丸出しの表現をしますが、前奏も、音も、言葉も、歌声も、全部優しいです。
消えそうになっていても
僕には何もできないけど
君が君の火を守る間
ずっと待っているから
02_桜の雨、いつか
収録作品は2000年3月23日発売、松たか子のアルバム『いつか、桜の雨に・・・』。
春を待ちながら聞きたい1曲。
歌詞のところどころから、死別が感じ取れる。
1番サビの終わりの歌詞、
「果てしないこの旅で どこかでいつか会おう」
ここには、まだ相手の魂とか思いとかといったものと気持ちを通わせられる距離にあると考えられる。とくに「会おう」という表現からは呼び掛けや主人公の意思があること、また対話をしているように感じられなくもないが、最後は……。
この歌を聞きながら、いってしまった者のことを思い空を見上げた日には、春であろうとなかろうと泣けてくる。
とても好きな歌なのに、全然言葉が出てこない。これでは紹介どころか、感想文としてもあやしい。
果てしないこの旅で どこかでいつか会える…
03_ポルツ
収録作品は2010年2月17日発売、藍坊主のアルバム『ミズカネ』。
2006年の前々作『ハナミドリ』および2008年の前作『フォレストーン』には、調子っぱずれで不協和的で攻撃的な曲が1曲は入っていて、
「ポルツもその系統の曲かぁ。正直、藍坊主のそういう曲好きじゃないんだよな~」
と思わずにはいられない前奏。
歌(Aメロ)も調子はずれの感はある。
しかし、サビは大部分が高い音域であり、濁りもかすれもないきれいな裏声で歌われているため、強い解放感がある。
ここまで聞いて、苦手感は消えていった。
……メロディーが美しすぎる。
歌詞について。
1番で「あなたが離れていくのに際し、張り詰めた気分にならなければいけないのに、自分はそうはなれず、いつもの自分のまま」と言う。
1番サビ後のパートは、考えが浅いかもしれないが、いろいろな思いが混ざってぐしゃぐしゃな心情、なんだろうか。ここは、ボーカルの名をとってか「hozzyラップ」という表現を目にしたことがある。
聞いている方もそうだが、作って歌っている方も「分からない」状態。
この「分からない」の質が前者と後者とでは異なっている気がする。聞いている方は「何が言いたいのか分からない」「歌詞の、単語の意味が分からない」、作って歌っている方は「ぐちゃぐちゃ」「理解できない、したくない」「認めたくない」。
個人的に、このような悲しい曲はアルバムの後半に置いて欲しいものだが、この曲に関しては前後の曲とのつながりは切れないし、位置も前から4番目がふさわしい。
「ファラルウェー」という言葉が、”葬儀”という意味の「フューネラル funeral」と似ている。
似てないか。
そんな煙を眺めていた、あなたをさらってく春風。
04_落花枝に帰らず破鏡再び照らさず
収録作品は2017年5月10日発売、cali≠gariのアルバム『13』。
ボーカル・石井氏にしては珍しい(と思われる)高音の連発と、これまた石井氏作曲にしては珍しい(と思われる)、全体的に”聞きやすい”メロディー。
約3分という短さに、決して明るくはないがきれいなメロディーで疾走する、とても印象的で、惹かれる1曲。
「空、完全に晴れて 今、眼前に蒼く 只、余りにも遠く」
という歌詞には、肉体を離れた魂は空(天)へのぼってゆく。だから「見えるのに、どうしたって届かない遠くにいってしまった」というように捉えている。
最後から3番目、環境音を録音したトラックを除けば最後から2番目に位置している。作者にとって重要な楽曲なんだと勝手に思っている。
尽きぬ憶いはやがて
摘み取られてしまうと
作詞-石井秀仁 作曲-石井秀仁
05_TINY DROPS
収録作品は2009年11月18日発売、B'zのアルバム『MAGIC』。
曲調は明るく、歌詞はだれかとの別れ。
「別れは悲しいけど、しかたのないことだ」という歌い手の気持ちが込められているように思う。
”優しい雨と眩しい夕日”みたいな景色が浮かぶ。
後半に位置してはいるが、そのあとの曲によって『TINY DROPS』の悲しさ・せつなさ・どうしようもなさがかき消されてしまう感じが苦手。
先に述べたように、歌い手は「悲しいけどしかたない」と思えているかもしれないが、「ただただせつない」というか「ひたすらせつない気分になりたい」と思って聞くので、この曲はとても好きなのに、個人的には曲順が好きではない。
会えないのは こわいけれど
それは変えられないこと
いつか皆 そこに行くから
その日までのさよなら
06_JOURNEY
収録作品は2002年発売、桑田佳祐のアルバム『TOP OF THE POPS』のDISC 1。
アルバムの他曲と比べて、絞りだすような歌い方。エッジボイスと呼ばれる、「ギッ」みたいな音が声に交じって、濁点のついた母音で聞こえる。
ゆったりで音高の上下が滑らか、メロディーもきれいなので口ずさんでしまう。
ただ、婉曲な表現ではあれ哀惜の念に堪えない歌詞には心が痛む。
歌ってもらった子守歌の名前をもう教えてはもらえないように、いってしまった者は戻ってこないのだと、悲しい現実を優しく言い聞かせられているような気分になる。
柔らかくて暖かい風に吹かれながら空を見ている様が浮かぶ。
これはベストアルバムのようだが、ベストでない普通のアルバムに先に収録されていたと思う。『JOURNEY』自身は1990年代(後半?)の曲だけれど、最近この曲がテレビから聞こえてきた。目を向けると、UNI○LOのCM。そのブランドが嫌なわけではないんだけどさ。んー、なんでかな、この曲を使ってほしくない感が隠せない……。
遠い過去だと涙の跡がそう言っている
07_メロディー
収録作品は1996年9月13日発売、玉置浩二のアルバム『CAFE JAPAN』。
歌いだしの歌詞から、悲しいというより、もの寂しさがよく伝わってくる。
バンド編成の曲だが、ギター、ベース、ドラム、キーボードのいずれも、とても控えめな音を奏でている。
サビの歌詞で(あり曲の名前でもあ)る「メロディー」を、とくべつ高いわけでもないのになぜ地声ではなく裏声で歌ったのか、はじめは分からなかった。むしろ裏声で出すには低いほどで、とても弱々しく聞こえ、出しにくいだろうとさえ思っていた。(細かく書けば、”メ”は地声で”ロディー”が裏声)
某動画サイト――隠すこともないだろうから書くことにするが――ニコニコ動画かYouTubeのコメント「玉置氏が、死んでしまった愛猫に捧げたもの」
といったものを見て以来、聞くのも映像を見るのも怖くなってしまったんだ。
ただ、そのコメントを見て、「メロディー」だけ裏声で弱々しく歌う理由を、個人的には次のように思った。
泣きそうになりながら、かつての家族だった猫「メロディー」に、届くことのない呼びかけをつぶやくように、歌ったんだ。
メロディー 泣きながら
遠い空 流されても
きみのこと 忘れないよ
08_いぬ331
収録作品は2011年3月9日発売、鈴村健一のアルバム『CHRONICLE to the future』。
このアルバムは、明るいとか、軽やかなバンドサウンドな曲が多い。
そんな中、”悲しいなにか”を感じさせる。それも、かなり強く。
異質な曲である。
いぬ331という曲名を見て、まず「いぬ」は「犬」だろうと思った。これは、鈴村氏が愛犬家だから、そう考えられたのである。ついで331は、曲名からすると、もしかしたら「3月31日」に、そのこが亡くなったから、気持ちを残そうとして作られた曲……短絡的にすぎますね。
とはいえ、分かっていても認めがたいであろう「命の終わり」というものを経験し、その悲傷の中生まれた曲だとしたら、他人にとっては一見違和感のある曲名であっても不思議はない。
―自分はこの先もまだ生きていかなきゃならない。いつまでも引き摺っているわけにはいかないきみの死を、認めてしまっていいのだろうか?―
二度と会えないことを認めたくなくて、虚空を掴むような、遣る方無い思いが伝わってくる。
「知る」に聞こえるように歌ったのだろうかとさえ思ってしまう。
僕らだけてに入れた 未来を見る力
それを今は希望にしたい
09_VANITAS
収録作品は2011年8月3日発売、DIR EN GREYのアルバム『DUM SPIRO SPERO』。
激しい楽曲目白押しのアルバム。その中で唯一、静かでいてメロディーもきれいで、分かりやすく書けば”聞きやすい”のがこの『VANITAS』。
一方、歌詞は分かりづらい。別れ・死が表現されているのに、比喩的な言葉が多く、言葉同士のつながりも捉えられない。
言葉同士のつながりを希薄にすることで、利き手に解釈の余地を与えるという手法なのだろう。
各パートの音が分離して聞こえるくらい明瞭。
1番のAメロはまだ楽器が静かなので声がよく聞こえる。低い声が心地よい。
振り返らない瞳
思い焦がれた
作詞-京 作曲-DIR EN GREY
10_花の匂い
収録作品は2008年12月10日発売、Mr.Childrenのアルバム『SUPERMARKET FANTASY』。
アルバムアートワークのキラキラ・わちゃわちゃした感じとは裏腹に、とても悲しく切ないのに、少しだけ温かみのある曲。
悲劇だが、希望を持たせるというか、一筋の光があるというような終わり方のアニメーションMVがある。欲を言えば、演奏している映像のMVというパターンも、作ってほしかった。
キーボードだけの1番メロ。サビからギターが加わる。そして、2番のサビでようやくベースとドラムが加わる。
歌が終わってからも演奏陣は止まらず、およそ1分半も演奏が続く。
最後のサビのシンバルの音は、さながら降り注ぐ光のように眩い。ハイハットやライドではなく、クラッシュなのが、この曲において、音で感情を表すのに一役買ったように思う。
階段を下りるように段階的に低い音の方に移るギターと、それとは対照的に高い音の方に上っていくベース、クラッシュシンバル連打のドラム。
これがサビ2回分続くとベース、ドラムが演奏を止め、ギターとキーボードが静かに、終わりへと導いてゆく。
歌(ボーカル)がなく、その分ギター・ベース・ドラムが思いを爆発させるような、感情的な演奏のところは、「声を上げ、涙がとめどなく流れている」様に思え、
ギターとキーボードだけになるところでは、「泣き疲れて静かになった」様が感じられる。
涙を禁じ得ないミスチルの曲第1位か2位。同率1位かも。
歌詞をじっくり追いながら聞くと泣けてくる。
人恋しさをメロディーにした
口笛を風が運んでいったら
遠いどこかで
ベストアルバム的な、漏れてしまって10の中に入れなかった曲たちもある。
それについても、自分の聞いた履歴として感想文・日記感覚で書いてみたい。
ひとまず、長くてまとまりのない感想文を終わります。