好 -kou

繊細人を自称し、香り・匂い・音・服好き。音楽を聞くこと書くことが好き。植物動物も好き。

レビューか、将又感想か。~B'z『SURVIVE』~

 好きなアーティストでも、全てないしは90パーセント位好きになれるアルバムというのは、正直なところそんなに多くはありません。僕はB’zをまともに聞き始めて1年にも満たないのですが、本作は今の所90パーセント以上は好きみたいです。

 このアルバムのある曲を初めて聞いたとき、なんと良い曲だと思い、それからしばらくしてCDを買いました。しかし、当時の僕は好きな曲のためだけにCDを、ときにはアルバムを買い、しかも「1曲リピート再生」に設定してその好きな曲しか聴かないという偏った聴き方をしていました。その数年後には、掃除か何かの際にCDもウォークマン内の曲データも処分してしまいました。それからさらに幾年か後、2019年の春頃でしょうか。再び買いました。無駄なことしますね。今回は始めから終わりまで聴きましたよ。

 また、感想を書いていきます。

 

B'z 『SURVIVE』 1997.11

1. DEEP KISS 4:14 ☆5

 歌うのが困難な曲だと名高い。高音が連発するけど、なんとなくメロディが弱いような気がする。ただ、面白い歌詞や歌い方がそこを補っている。ボーカルが終わってからのがちゃがちゃした演奏もいい。エンディングではバスドラムの連打が聞ける貴重な曲。

「爆発しそうになっても だれにも受けとめられない」

 

2. Liar! Liar! 3:23 ☆3

 友人が貸してくれたベストアルバムで初めて聞いた時、苦手だと感じた曲。今はそんなことない。暑苦しい感じの曲。終盤の「愛する人が 灰になりゃそれでいいyear!」、なかなか病んだ表現だなんて思っていたが、“灰”ではなく“ハッピー”であった。

「どこまでも 追いつめても むなしいだけ」

 

3. スイマーよ!! 3:18 ☆5

 このアルバムの雰囲気づくりに大きく貢献していると感じた一曲。サビの「―横切ってゆこう」の「ゆこう」の箇所、1番と2番とで歌い方がちょっと違う。本作中で一番短い。この曲が5分もあったら疲れちゃうかも、とは思うがやはり短い。

 雨が降る中疾走しているような不思議な気持ち良さがある。

「あふれこぼれる 嘆きを唄声に」

 

4. Survive 4:48 ☆5

 「スイマーよ!!」の次に「Survive」が配置されているということも、きっとこのアルバムが評価される理由のひとつだろう。こちらはゆっくり、しっとりしている。前曲に続き、雨が非常によく似合う曲。スイマーの方では雨の中走っている感じと書いているので、断続的な雨という状況になってしまうが、この曲の1番のAメロでは曇っていてBメロで雨が降り始め、サビで本降りとなり、以降雨は降り続いているといった景色を(勝手に)想像して聴いている。サビでリズムを刻むライドシンバルが、雨が強く降り続いている様を演出しているようにも感じられる。

「目はさえてゆくよ 星のように」

 

5. ハピネス 4:51 ☆5

 優しい曲1。歌詞からも、卑屈っぽさとか暗さとかは感じられない。何か足りないなと思っていたが、ベースが演奏されていないのがその原因らしい。音が軽いだとか薄っぺらいだとか言うのではなく、土台というか、安定感のようなものがないという意味で、足りない感じがした。濡れた体を暖炉の前で温めているような様子の曲。

「楽しい歌だけ 歌いながらね 歩いてゆこう」

 

6. FIREBALL 4:12 ☆5

 共感できると言ったらえらそうに思われそうだが、1番の歌詞が好き。詞にあるような経験を、何度かしたかもしれない。ベースとバスドラムの音が、ぐじゃぐじゃやたら曇った感じに聞こえ、ちょっと気持ち悪い。それに加えゆっくりと進行するものだから、暗くどろどろしている。

 “どうでもいい 死んでもう灰になれ”

 「ハピネス」で明るく優しい気持ちになった後聞くので、ここでアルバムの雰囲気が変わる感じがする。

 「だれにも よりかからないで やっていくことは 信用するなとか 友情すてろってことじゃなくて」

 

7. Do me 3:27 ☆5

 騒がしい曲1。金管楽器の輝かしい音色が曲を派手に装飾している。また、演奏やボーカル、サビでの掛け声なんかのチャラチャラしたところもとても面白い。個人的なことになるが、小学生時代、外で遊んでいて、突然の雨に夢中で家まで走った時のようながむしゃらな感じがして好き。

「やれ、やれ スタートしてみればわかる こわいのはあたりまえよ」

 

8. 泣いて 泣いて 泣きやんだら 3:37 ☆4

 優しい曲2。明るいメロディ。ゆっくりのわりに短い。「Do me」の勢いやちょっとふざけた感じが一気に静められる。ただただ優しく、泣いた後でなくても、例えば新しい環境に移ってつらい時に聴くというのも良いかも。

「どうやったって 毎日は過ぎるし」

 

9. だったらあげちゃえよ 3:51 ☆5

 騒がしい曲2。この曲でも金管楽器が演奏され派手ではあるが、「Do me」と比べると上品な印象がある。所々字余りにして無理やり歌っている感じがするも、それが不快ではなく、むしろ歌に勢いがついている。前奏の、タンバリンのような音がいいカンジ。この曲の前奏を聴くと、夜、雨の降る町を眺めているような場面が浮かんでくる。

 進めなくなったら、この曲をよーく聴き込んでみようか。溜め込んでしまったもの、要らないものは手放すのが良いかもしれない。それにしても、教科書の類や制作物等、思い入れのある物品達はなかなか捨てられなくて困るな。ただ場所をとるだけの物が大半なのに。捨てるのが怖い。

「ゴミの日に出してしまえ ま新しいハートになれるぜ 不安だろう 恐いだろう でもね それがいい」

 

10. CAT 3:41 ☆5

 やたらと高音が連発する。試しにちょっと歌ったところ、サビなんか殆ど裏声でなければ歌えず、何とも情けなかった。

 前奏の、冷たい雨が降っている感じ。聴いていると、サビでの歌唱と詞で圧倒される。……もっと書こうとしたが、考えあぐねるだけだった。

「いってらっしゃい すきなとこへ 思いどおりにかけまわるがいい」

 

11. Shower 4:37 ☆5

 このアルバムの雰囲気づくりに大きく貢献していると感じた一曲。最後から二番目という、良い位置に居る。

 showerには「夕立」という意味もあり、夕立は、「夏の夕方など、短い時間に激しく降る雨」だそう。人との別れや世の無常といった強い悲しみ、どうしようもなさは詞に込められている。一方、歌や演奏はとても穏やかで、テンポも遅め。夕立という言葉から想像される激しさは感じられない。

 曲を聴き、歌詞を読みながら現実のことを考えると、恐ろしく、なんとも悲しい気持ちになる。そんなことを考えずに聴けば、穏やかな雨の降る夕方、外を眺めているような心地よさに浸れる。この曲のように、人との別れ(特に死によるもの)を思わせる曲に弱いんだ。

「どうして人はいつか 大事なこと忘れるんだろう」

 

12. Calling 5:56 ☆5

 中学2年か3年の時にたまたま友人の親のカーステレオで聞いて、いい曲だと思ったものの一つであり、このアルバムを買うきっかけにもなった曲。曲名が分からなかったので、車の中でなんとか歌詞を覚え、帰宅後調べ、この曲に辿り着いたという思い出がある。

 フェードアウトではなく最後まで演奏して終わってほしかったと思う。音が小さくなっていく中で稲葉氏が叫んでいて、そういう所も聴きたかった。

 中学生の頃は、曲名から「call、電話を掛ける・呼ぶ」の派生形くらいの意味にしか思っていなかったが、一部、前曲と繋がりのありそうな詞もあり、悲しい内容の曲。

「あっという間 時間は積もり 何も見えなくなりそう」

 

 CD音源のみで判断したので正しいかは分かりませんが、5枚目『IN THE LIFE』から前作『LOOSE』まで出番の多かったチャイナシンバルが、今作では殆ど沈黙しているようです。音を聴けなくて残念に思ったのですが、今作の雰囲気に合わないのでしょうかねぇ。

 1曲繰り返して聴くのも、アルバム通して聴くのも良いです。今でも好きな曲だけを繰り返して流しておくのが好きですが、このアルバムは、全曲通して聴くとより雰囲気を感じられるかもしれません。ジャケット画像の暗さ、湿った感じも好きです。3分台の曲が多く、12曲収録で50分弱と、比較的短め。それはそれで聴きやすくて良いのですが、いくつか「この曲はもっと長い方が、個人的には嬉しかった…」という不満とも願望ともつかない思いはしてしまいます。

 最後に。歌も演奏も激しかったり騒がしかったりしていますが、なぜかとても心地よく、雨が降っている日、暗くなる前に聴きたいアルバムです。